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遺伝子―親密なる人類史(シッダールタ・ムカジー)

オーディオブックで聴きましたが、標準速度では30時間にもなる長編でした。
遺伝学の歴史から現代の遺伝子研究まで幅広く取り上げてあって面白くもあり、考えさせられる本でした。

前半はでは、偉大な科学者たちの物語。

生物学ですら苦手だった若き日のメンデル。

謙虚でささやき以上の大きな声を出さない小男だったグリフィス。
ナチスドイツに対するレジスタンス運動しながらの実験していた「オペロン説」のジャックモノー。
逆にナチス政権下のメンゲレの人体実験はエグくて印象に残りました。

中でも個人的に好きなのはDNA二重螺旋発見の物語。

「恋をした」「遊んでいるように研究した」というワトソンとクリックの関係と「一目で嫌いになった」「数十センチの距離で戦争をしているようだった」というフランクリンとウィルキンスの関係が正反対でおもしろかったです。

でもやはり事実上盗作された上に、卵巣ガンで亡くなったためノーベル賞受賞されなかったフランクリンはかわいそうに思いました。
確認したら、高校の教科書には4人全員の名前が書いてあるようなので少し安心しました。

後半は遺伝子とタンパク質の複雑な関係や遺伝子組換え技術の倫理的な論争についても探求されています。

そして、ダウドナとシャルパンティエによるクリスパーキャス9をゲノム編集技術の発表。
これまでのどんなゲノム編集技術よりも簡単で強烈で効率的だそうです。

これは細菌のウィルスからの身を守るメカニズムから発見されたのはおもしろいと思いました。

このクリスパーキャス9とES細胞を組合わせたら色んな事ができるようです。

なのでアメリカでは規制をかけましたが、中国はそれをあっさり越えてしまったそうです。

遺伝子をコントロールできるようになった人類はどのようになるか?不安と楽しみが入り混じる終幕でした。