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アメリカ小麦戦略と日本人の食生活(鈴木猛男)

アメリカの小麦戦略が日本の食生活に与えた影響やその背景が詳しく説明されています。

「世界のパン籠」と言われるアメリカは常に大量生産し続けなければならない状況になってしまっていますが、大戦の終結から1953~1954年の大豊作により大量の余剰作物がでてしまったそうです。

その余剰作物処理のターゲットになったのは敗戦国である日本。

しかし、無理やり買わせた訳でなく、日本にとっても好条件の取引だったそうです。

この取引が復興に大きく貢献したという面はあったそうです。

とはいっても、学校給食もアメリカからのパン用小麦、脱脂粉乳などの援助支援で始まり、
米攻撃キャンペーンも展開され日本の食はアメリカの小麦に浸食されていったそうです。

意外な事に当時、日本では秋に稲刈りの終わった水田に、今度は麦の種をまき、翌春に収穫をするという水田二毛作による麦栽培が全水田の6割ほどで行われていたそうですが、それも安価なアメリカの小麦の流入で急速に減少していったそうです。

これを読んでアメリカにとって日本マーケットの獲得のモチベーションはもちろんあったでしょうが、
自国の余剰作物の処理のモチベーションの方が高かったように感じます。

著者はパン食の問題点としては
ほぼ全量輸入である事から「食料の安全保障上」での問題や、
ご飯と違って添加物いっぱいの食品でもある事から、「安全の面」でも不安が残ると書いてあります。
貨物船による高温多湿の長距離輸送のためリン化アルミニウム。 DDVP、 マラソン、スミチオンなどの農薬散布が必要でもあるのも懸念事項です。

しかし、パン食で一番大きな問題は食生活全体が大きく洋食家に変化させる点だと主張されていますが、私もその通りと思いました。

この本は日本の食文化や食生活の大切さを再確認するきっかけとなる一冊だと感じました。