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沈黙の春(レイチェル・カーソン)

有機農業に関わっていたらよく目にする本です。

1962年に出版された「沈黙の春」は、当時の農薬の乱用による環境問題について警鐘を鳴らした本です。

科学哲学への招待(野家啓一)には
「この本が出版された1962年はクーン『科学革命の構造』が出版された年でもある。したがって、この年は、クーンとカーソンによって従来の科学および科学技術のあり方を根本から問い直す問題提起がなされた記念すべき年であった、と言うことができる。」
と書いてあります。

科学全体に対しても大きな影響を与えた本のようです。

本書では、農薬の使用によって鳥や魚などの生物が死滅し、生態系のバランスが崩れていく様子が描かれています。
また、人間にも悪影響を及ぼし、発がんや先天的な奇形児のリスクが高まることも指摘されています。

さらに、農薬の乱用によって生物の抵抗性が高まり、ますます強力な農薬が開発される悪循環についても警告しています。

こららの事例を科学的なアプローチで説明してくれていますので説得力があります。(反証されている事例もあるようですが。)

その影響もあって現在では自然環境への意識が高まり、農薬についても規制が強くなっているので大変価値のある本だと思いました。

ただ、著者は
「化学性合成殺虫剤の使用は厳禁だなどというつもりはない。毒のある生物学的に悪影響を及ぼす。化学薬品をだれそれ構わずやたら使わせているのは良くない。」

と農薬を全否定している訳ではありません。

この本を読んで過度な農薬批判をするのは間違えたとらえ方だと思いました。