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有機農業と慣行農業 土と作物からみる(松中照夫)

土壌学基礎基礎」など難易度の高い本も書かれている有名な農学者の本なので身構えましたが、読みやすい本でした。

冒頭で
「農産物を同じように生産しているのに、慣行農業を営む農家が形見の狭い思いを持つのは不幸なことだとつくづく思った。」
と書いてありますが、これには強く共感しました。

有機農業は環境への影響や農産物の品質において慣行農業よりも無条件で優れていると考えて良いのだろうか?
という疑問を投げかけられおり、有機農業でも環境負荷を与えている事もあると書かれています。
個人的にも「慣行」で環境負荷の少ない農業をしている人も多いと思いますし、農産物の品質においては有機農家においてはピンキリなのでその通りだと思いました。

「慣行農業には我が国の基幹農業として、大多数の国民に食料を安定して供給する役割があると期待している。有機農業には有機農産物を必要とする人たちに食料を提供する重要な役割がある。」
という部分にも共感しました。
有機農業で大量生産できる農家も増えてきましたが、まだまだ圧倒的に少ないのです。やはり慣行農業は必要だと思います。
また「有機農産物を必要とする人」がいるのも確かです。そういう面でもやはり有機農業は価値があると思います。

有機肥料(アミノ酸肥料)についての効果も書かれていますが、化学肥料を使用することを否定するのも問題だと書かれています。

また、有機農業については
「有機農業とは単に化学合成資材を使用しない。農業というような軽い理解ではない。」
と指摘されています。

日本では単に農薬、化学肥料を否定してる人が多いのでもう少し深く考えられる人が増えたらいいなと思いました。

「原料を輸入に頼るのが我が国の化学肥料生産の弱点その弱点を補完するには養分循環型農業に戻るしかない。」
という記述もあります。

個人的には有機農業の本来の価値はこの部分にあると思いました。