きのこは5界説の分類では動物界でも植物界でもない「菌界」の住民。
青果流通では野菜に紛れているが、産業としては農業でなく林業に分類される。
この得体の知れない生物について少し勉強したいと思い、この本を手に取りました。
内容はきのこの面白さがあふれる本でした。
きのこの研究者である作者の実体験と抱負な知識で様々な角度からきのこを語ってくれます。
読み進めるにつれきのこに対する興味が増してきます。
きのこ生体はあまりにも多種多様。
暗闇で光るツキヨタケ、数時間から1日半で消えてしまうヒトヨタケ。
なぜそのように進化したか分からないものが多くておもしろい。
きのこは種類が多すぎて覚えきれないが、人を殺すほどの猛毒を持っている「タマゴテングタケ」と「ドクツルタケ」だけは覚えておいた方がよさそう。殺人にも使われた事のある恐ろしいキノコである。
個人的には植物と「菌根菌」との共生に特に興味をそそられた。
特に松や栗のような樹木の栽培には菌根菌が大きく関係している。
菌根菌の研究が進むともう少し農業が発展するのではないかと思った。
また、菌根菌に養分の吸収を任せて葉緑素、葉、根までなくしてしまったツチノアケビ、オニノヤガラ等の解説の後、
「家畜や作物もヒトのおかげで大繁栄をとげている。彼らからみれば、人を培養しているというかもしれない。
結果的に生物としての価値は同じであり、われわれは互いに助け合って生きているのである。」
と表現していたのは特に心に残った。