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誰が農業を殺すのか(窪田新之助 山口亮子 著)

農政の歪み、怠慢さ、稚拙さを指摘してくれている本です。

日本が開発した品種、みかん(愛媛38号)、ブドウ(シャインマスカット)、イチゴ(紅ほっぺ)
などは中韓に略奪されっぱなしになっています。なぜ守れなかったのか?
これらの品種を守れなかった事はこれから大きな障害になると思いました。

農産物輸出について活路を見出すのには間違っていないと前置きをしたうえで、輸出増によって農家が潤っている訳でないカラクリを説明してくれています。
また、輸出による利益よりそれを補助する予算額が多いのではないかという行政のバラマキぶりも指摘しています。

有機25%という国家戦略戦略についても苦言を呈しています。
有機農業100%を掲げ経済破綻したスリランカはたしかに参考にすべき事例だと思います。

「園芸振興」については
成功事例である「白神ねぎ」10億円プロジェクト、失敗事例であるコメの産地によるトマトの大規模栽培について比較してあって参考になりました。

部会員による抜き打ち検査により品質をあげる事例や、7月中旬から8月上旬のネギの端境期に出荷できるようJAや「農業技術センター」と連携して品種の選定や種まきの時期などを検討した事例を見ると、やはりしっかりした規格のものをできるだけ端境期を少なくして安定して出荷し続けるのが単価を上げる秘訣だと思いました。

著者はあとがきで「この国の農政が農業の成長産業化を志向するまでには成熟していない農業は守ってしかるべきであるという旧来からの認識を変えられない農業関係者が圧倒的多数を占めている」と書いています。

私も同感で国に守ってもらう必要のない強い農業を経営する農家が増えてほしいと望みます。