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生命とは何か 物理的にみた生細胞(シュレーディンガー著 岡小天・鎮目恭夫訳)

DNA発見以前に遺伝や突然変異について書かれています。生物学において古典的な価値の高い本だと思いました。分子生物学の歴史と照らし合わせて読んだらより面白いと思います。

著者のシュレーディンガーは1933年にノーベル物理学賞を受賞している物理学の権威でありながら、生物学においても大きな影響を残しています。その影響を与えた価値のある本といえるでしょう。

この本にも影響されたジェームス・ワトソンとフランシス・クリックによってDNAの二重螺旋構造が発見されます。

また、この本に書かれている生命におけるエントロピーの考えは後にイリヤ・プリゴジンによって「散逸構造論」として確立されます。

このクリックとプリゴジンもまた物理学出身というのは面白いと思っていましたら、どうやら当時存在していなかったこの「分子生物学」という学問は物理学と相性が良かったそうです。

しかし、当時の共産主義であるソビエトにとってはこの内容は都合が悪くて激しく非難されたそうです。(訳者あとがきより)

今も昔も政治と科学はしばしば相性が悪いと思いました。


そして、この本を読んでみたところ、すごく読みにくく難解な本でした。

著者が「専門ではない」と前置きしながら生物学の基礎を説明している部分があるのですが、そこだけは理解できました。
「専門でない」と言いながらも濃い内容で、今の時代に読んでも遜色しない内容ですさまじいと思いました。

遺伝子や突然変異はどういった原理なのかという説明は難解でついていけない部分もありましたが、
「DNAが発見されていない時代にこのように考えられるのか」と尋常でない想像力だと思いました。

また、生命はエントロピーの原理(熱力学の第二法則)によって崩壊していくという説明もあります。それを負エントロピーを食べる事により崩壊を免れているという説明も面白かったです。その計算式も出てくるのですが、その部分も難解でよく分かりませんでした。

理解できない部分が多かったのでアマゾンのレビューを見てみたのですが、「理解できなかった」「難しかった」というレビューが多くて、僕だけでなかったと安心しました。

とにかく気軽に読む本ではないと思いました(笑)