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地球46億年気候大変動(横山祐典)

気候変動についてニュートラルな考えが知りたくて科学的なアプローチをしている書籍を探した結果、この本と出会いました。

地球誕生から現代にいたるまで起こった様々な気候変動の話。
少ない情報から答えを導きだす科学者たちの活躍も書かれています。

個人的に地球は100%温暖化にむかっているという考えにはに違和感を感じていたところ、
「地球は寒冷化に向かってるという仮説や、人間の活動による温室効果ガスによって寒冷化が打ち消されているという仮説もある」

と書かれていてスッキリしました。

とはいっても温暖化に向かっている仮説の方が有力なので二酸化炭素削減のアプローチは大事。

そのキーポイントは過去の寒冷化イベントにあると感じました。

二酸化炭素濃度の変化の原因の70%は海にあると書いてあります。
その中で植物プランクトンの活動についても書かれています。

「氷期には窒素やリン酸が多かったから光合成の効率が活発になって二酸化炭素が減少した。」
「植物プランクトンにとって必要な鉄が増え光合成の効率が良くなった。」
「同じくケイ酸が豊富だったから光合成の効率が良くなった。

といった記述は農業にも通じるものがあって面白かったです。

※読書メモ
・地球誕生時、太陽はずっと暗かった。にもかかわらず生命が誕生できるほど暖かかった。
・アンモニア、メタン、二酸化炭素によって温められていた。
・2度の大酸化イベント
・約30億年前、シアノバクテリア誕生から5~10億年後に1度目の大酸化イベント(GOE)が発生した。
・シアノバクテリアによってできた酸素は鉱物や岩石を結合したため大気中の酸素は上昇しなかったが、
プレートテクトニクスによって酸素と結合しやすい苦鉄質岩(玄武岩)から、
酸素と結合しにくいケイ長質岩(花崗岩、流紋岩)に入れ替わった事により大気中の酸素が急上昇した。
・GOEの10億年後二度目の大酸化イベントNOEが発生した。
・プレートテクトニクスによって水深の浅い海が広がった。
・それにより有機物が水中で分解されず体積されるようになった。(炭素レザボア)
・炭素を地表近くにとどめる事により光合成細菌の光合成能力が高まり酸素濃度の急激な上昇につながった。
・2度の酸化イベントによりたような生物が誕生できるようになった(カンブリア爆発)
・恐竜の時代は超温暖化時代だった。
・二酸化炭素濃度は1000~2400ppm(現代は400ppm)
・火山活動が活発だったため。地中からの二酸化炭素の供給。
・現代の2倍の長さの陸弧(火山帯)と炭酸カルシウムなどの炭酸塩岩も要因。
・炭酸塩岩はマグマの融点を下げる働きがあり、二酸化炭素も生成する。
・新世紀である3400万年前には寒冷化が起こった
・5000~4000万年前インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ、チベット山脈ができあがる。
それによって「風化」が起こり二酸化炭素が固定された。
・また、8000万年前にはアフリカ大陸、5500万年前にはインド亜大陸の動きによりオフィオライト(カルシウムやマグネシウムに富んだ超塩基性岩)
が地上に露出することにより二酸化炭素が減少した結果寒冷化が進んだという説もある。
・ミランコビッチサイクル。地球の公転周期の周期的な変化によって
過去100年間は10万年周期に「氷期」「間氷期」が繰り替えされている。
・近年地球温暖化が話題になっているが、現代は「氷期」であり、その中でも「間氷期」といって比較的温暖なサイクルにある。
・大気中の二酸化炭素濃度は氷期180~200ppmは間氷期280ppmとほぼ一定だったが現代は400ppmある。
・規則正しかった二酸化炭素濃度の変化の原因の70%は海にある。
・大気の炭素貯蔵量を1とすると、陸上の植物をそれと同じくらい。土壌は2.5倍。海は45倍になる。
・溶解ポンプ、二酸化炭素は海水に溶けて炭酸になり、海流によって深い部分に運ばれる。
・気温が低くなると溶けやすくなる。
・塩分が高くなると溶けにくくなる。
・有機物ポンプ、植物プランクトンによって二酸化炭素は有機物という個体に変換される。
・そのままではすぐに分解されて二酸化炭素に戻ってしまうが、海の生態系によってより大型の生物に
リレーされていく事により分解されにくい大きさになり深海に沈んでいく。「マリンスノー」として観察される現象。
・それもバクテリアなどによって分解されるが、海底で発生した無機炭素は深層海流によって運ばれるので
なかなか地上に出ない。大気との接触を1000年以上断たれる事になる。
・それによって大気中の二酸化炭素を海に閉じ込めている。
・炭酸塩ポンプ、二酸化炭素は酸性なので弱アルカリ性の海水に取り込まれると中和反応を起こす。(CO₂+H₂O+CO₃²⁻→2HCO₃⁻)
・これによって海水中の炭酸イオン(CO₃²⁻)が使われるが海水中の炭酸カルシウム(CaCO3)の溶解によって補完される。
・海水に溶け込んでいる炭酸カルシウムには生命が大きく関わっている(アサリ、サザエ、アワビ、サンゴ礁など)。
・サンゴ礁形成には二酸化炭素を放出する。一方、二酸化炭素を海に取り込むのに必要な炭酸カルシウムをふやす。
・微生物ポンプ 海水に溶けにくい有機物をつくる第四のポンプの仮説
【氷期の二酸化炭素低下はなぜ起こったのか】
・最終氷河期には窒素がリン酸などの栄養が海中に十分にあったからという仮説
・鉄不足が光合成のボトルネックとなって二酸化炭素が低下しない。(リービッヒの最小率による)
間氷期のような暖かい時期には鉄分量が少なく氷期に劇的に増加したという仮説。
・サンゴ礁仮説 サンゴ礁減少によって炭酸カルシウムの生産量が減った結果、
二酸化炭素排出量が減り結果二酸化炭素取り込み能力が高まった。
・一方、海水面低下により大陸棚が広がった結果、炭酸カルシウムを代表する炭酸塩が海水に流れ込んだ。
それによって二酸化炭素取り込み能力が増大した。
・ケイ酸リーク仮説 ケイソウなどの植物プランクトンが活発になるケイ酸が大量に消費される。
それによってケイ酸が枯渇してそれがボトルネックになって光合成の効率が低下する。
・鉄が少ない海水では光合成の効率が悪く、それを補うためにケイ酸を大量消費する。
・氷期にはなんらかの理由でケイ酸が潤沢に供給されていた。
【D-Oサイクルとハインリッヒイベント】
ミランコビッチサイクルよりはるかに短い数年から数十年単位で気温が10度くらい変化する「超短」の気候変動
・ダンスガードオシュラーサイクル、熱塩循環の機能の低下、氷床の融解など理由で海水の塩分濃度がさがり
北半球は寒冷化が進み、南半球は温暖化だ進んだ。
・ハインリッヒイベント、大西洋外洋に定期的に氷山由来の岩屑が急激に増える。
寒冷化が進んだ結果、氷山が流出する。
・2つの気候変動には規則性がある。D-Oサイクルを4~5回繰り返した後にハインリッヒイベントが起こる。
エピローグ
・現代では熱塩循環の低下が報告されている。しかし、寒冷化どころか温暖化が進んでいる。
・ミランコビッチサイクルでもそろそろ間氷期が終わって氷期がはじまってもいい時期である。
・人為起源の温室効果ガスによって寒冷化の効果を打消しているという指摘もある。
・地球温暖は懸念されるほど深刻化せず、むしろ寒冷化すると主張するグループも少なからず存在する。