クビを宣告されたものの、まだ辞めたことにはなっていないみたいです。
とりあえず普通に出勤して、タマネギの皮むきをしていました。
とは言っても、さすがにこの状況で仕事を続ける気にはなりません。
仕事を探しました。
どこか他にも農業の仕事がないかと思い、この農業法人に野菜を出荷している農家さんがいました。
その農家さんに相談しました。
「ここでクビになるんですけど、仕事はありますか?」
すると、まさかのOKが出ました。その農場で働かせてもらうことになりました。
それから人生の軌道が乗り始めました。そこではじめてちゃんとした農業の仕事をすることができ、色んな農家さんとの繋がりもできました。
すると、気づいたことがありました。みんな売り先に困っています。
メディアは「食糧自給率が低い」「農家が不足している」と煽っているけど、現場では野菜が余っているようです。
しかも、ちゃんと就農できている農家さんは想像以上に有能な人ばかりなのです。
その現実を突きつけられると、就農する意欲がなくなってしまいました。
なので、野菜を販売する仕事をすることにしました。
農家さんの繋がりで売り場を紹介してもらい、順調に売り上げも伸びて、野菜の販売で生計を立てられるようになりました。
当初のイメージとは少し違った形になりましたが、生産者さんにも消費者さんにも感謝されながら、毎日楽しく仕事をすることができるようになりました。
ところで、この農業法人との関係に戻りますが、ある日、農場長に
『話があります。事務所に来てください。』
と呼び出されました。どんな対応をされるのか少し楽しみにしながら、事務所に行きました。
テーブル越しに向かい合って座り、一息ついて、
『すみませんでした!!!!』
と深々と頭を下げて謝ってきました。
『本当は辞めて欲しくないんです!』
気持ちの良い手のひらの返しようにスッキリして和解しました。
そもそも僕が悪いので。
新しい働き口は見つけていましたが、せっかく和解したので大幅にシフトを減らして、この農業法人の仕事も続けることにしました。
そして、少し距離を置きながら、その後もこの農業法人で色んな事件を目撃することになります。
第四章 ブラック系?農業法人の章
おわり
もう少しだけ続きます。