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そのとき、日本は何人養える?食料安全保障から考える社会のしくみ(篠原信)

第1章では「日本だけでどれくらいの食料が生産できますか?」「なぜ化石燃料と食料が関係あるのですか?」
という感じの質問を答えていく一問一答形式で分かりやすいです。20ページほどですが、この部分を読むだけでも概要をつかむことができます。

第2章以降はそれを深堀りする内容です。
「飢餓はなぜ起きる?」「大規模農業はすべてを解決するのか?」「どうして石油が食料生産に関係
するのか?」「混迷する世界と食料安全」
どれも考えさせられる内容でした。

日本のコメの自給率は100%を超えているので楽観視する声もありますが、
もし、日本国内だけで食料をまかなうとしたら石油肥料、石油燃料が今まで通り使えるなら9000万人。
それがなければ3000万人だそうです。

それだけ日本人は外国から来る小麦や油、外国のエサで育った肉を食べている事になります。

また、1㎉のお米を作るの2.6㎉の化石燃料が必要だそうです。
現代の農業はそれだけ化学肥料、農業機械などの燃料によって大量に化石燃料を使っている事になります。
※化学肥料の原料は空気ですが、生成するのに化石燃料をたくさん使います。

「現代は化学が発達したように見えて実は石油の使い方がうまくなっただけ」という表現はなるほどと思いました。

肥料に関しては有機肥料にすれば解決するという声もありますが、畜産糞尿に関しては、もとをたどれば海外の輸入飼料なので、それで問題が解決する訳ではないという指摘もされています。

化石燃料に代わるエネルギーとして水素エネルギー「太陽電池」「風力発電」「地熱発電」「揚水発電」「重力蓄電」「バイオマス発電」「バイオエタノール」
など紹介されて、色んな発電方法があるのだなと感心させられましたが、どれもまだまだ問題があるようです。
とはいえ科学の発展によって解決されるのを願うばかりです。

日本はなぜアメリカから安い食糧が入ってくるのか?その仕組みも面白かったです。
食糧安全保障のためには余分に作らないといけない→価格が低迷する→所得補償制度で補填。
余った食糧は海外(日本など)に輸出。という仕組みもあって日本の食糧は価格競争では勝てないようです。結果、日本は食糧の多くをアメリカに依存することになっているのでそれに対する危機感は持つべきだと思いました。

食料危機が起こる仕組みも「食料をたくさん作るから飢えることがあり、食料を送るから飢える人がでたり、食料を作っている人自身が飢える場合がある。」というキテレツな仕組みについても書いてあり考えさせられます。

現在の食料事情は決して安定している訳ではなくこういう仕組みで成り立っているという事を知るのは大切だと思いました。